「治安は悪化している」という実感。だが殺人率は、2000年から20年で57%改善していた
不安なニュースは増えた。だが1事象を、複数チャンネルの注目度と、20年超の実データで見ると、体感と現実は逆を向いている。
『治安は悪化している』。多くの人が、そう感じている。だが、その実感は、20年を超える実データと、一致するのだろうか。1つの事象を、体感と、長期のトレンドの両方から突き合わせる。
まず、体感の側。国会での『闇バイト』の言及は2年で3.1倍。Wikipediaで『治安』を調べる人も、減り続けている(年間12,912→8,980回)。注目や不安という『体感の代理指標』は、悪い方向を指しているように見える。
次に、現実の側。日本の殺人率は、2000年の0.53から、2023年は0.23へ。57パーセントも下がり、改善していた。単年の上下ではない。20年を超える、一貫したトレンドだ。
なぜ、体感と現実がずれるのか。統計学者ハンス・ロスリングは『ファクトフルネス』で、これを『ネガティブ本能』と呼んだ。人間は、劇的な悪いニュースを、ゆっくりした良い変化より、はるかに強く記憶する。個別の不安は鮮烈に報じられ、20年かけた殺人率の改善は、誰も見出しにしない。
誤解しないでほしい。個別の問題が消えたわけではない。だが『個別の不安が増えた』ことと、『殺人率が長期で改善した』ことは、両立する。不安の量で社会全体を測ると、必ず判断を誤る。両方の数字を、同時に持つ。それが、ファクトフルネスだ。
報道は、悪いことを報じるのが仕事だ。そのぶん、私たちが浴びる情報は、構造的に不安へ偏る。殺人率の改善のような、ゆっくりした良い変化は、ニュースにならない。この偏りを補正するには、注目度(体感)と、基準となる実データを、必ず分けて見るしかない。
注目度は、国会・X・Wikipediaなど、複数のチャンネルで測れる。それらが揃って不安を指しても、それは『関心が上がった』観測であって、『実際に悪化した』証明ではない。関心の量と、現象の実数は、別の数字だ。この混同こそ、体感と現実のズレを生む最大の原因になる。
ロスリングの教えは、楽観になることではない。『世界は良くなっているが、まだ問題も多い』と、両方を同時に持つことだ。改善したデータと、残る個別の問題を、同じ机に並べる。デコードが供給したいのは、その冷静さだ。
取得 2026-07-24 07:40 JST(launchd 定時観測)· この記事の全数値は再取得できます