日経は52週の76%(高値圏)、実質賃金は-0.3%
市場は最高値圏、家計の手取りは目減り。同じ経済の株価と実質賃金という二つの数字が、別の向きを指している。
日経平均株価は過去52週のレンジで76%(0=安値・100=高値)と高値圏にある。一方、働く人の実質賃金指数は前年比-0.3%。株式市場が最高値圏を伺う裏で、家計の手取りは前年より目減りしている。同じ日本経済を映すはずの二つの数字が、まったく違う景色を見せている。
なぜこうなるのか。株価は企業の利益と投資家の将来への期待を映す。円安が進めば輸出企業の海外利益は膨らみ、株価を押し上げる。だがその同じ円安は輸入物価を押し上げ、物価を差し引いた実質賃金を削る。つまり円安という一つの力が、株高と賃金目減りを同時に生んでいる面がある——市場を潤す薬が、家計には毒として効いている構図とも読める。
問題は、この二つの数字が『誰の経済か』で分かれることだ。株を持つ層には最高値の恩恵が届き、資産を持たず給与で暮らす層には目減りだけが残る。株高は景気回復の象徴として報じられるが、その果実の配分は最初から偏っている。同じ『好景気』という言葉が、資産の有無で正反対の実感を指すのではないか。
市場は将来の期待を、実質賃金は今の購買力を映すため、両者のズレは『期待と実感の時間差』とも説明できる。だが期待がいつまでも実感に届かなければ、それは時間差でなく分断だ。株価だけを見て『好況』と判じる政策は、目減りする側の家計を視界から外してしまう。どちらの数字を基準に置くかで、打つべき手は正反対になる。
『株価最高値』のニュースは好況の証として報じられるが、その恩恵は株を持つ層に偏る。実質賃金がマイナスなら、資産を持つ家計と持たない家計の間で、同じ経済の体感は正反対になる。株高は、格差を静かに広げる局面でもあるのではないか。
市場は将来の期待を、実質賃金は現在の購買力を映す。両者のズレは、期待と実感の時間差とも読めるが、期待がいつまでも実感に届かなければ、それは『こぼれ落ちる層』の存在を示す。どちらの数字を政策の基準に置くかで、打つ手は変わる。
確かなのは、株価と実質賃金が同じ向きを指していない、という一点だ。好況か否かは、誰の視点に立つかで答えが割れる。
取得 2026-07-27 07:00 JST(launchd 定時観測)· この記事の全数値は再取得できます