「過去最高の賃上げ」の年に、実質賃金はマイナス
賃上げ「額」は報じられる。だが物価を差し引いた手取りの実力=実質賃金は、前年割れ。名目と実質は、別の数字だ。
春闘で「過去最高水準の賃上げ」が続くと報じられてきた。それは名目の話だ。
物価上昇分を差し引いた実質賃金は、前年比-0.3%。上がった賃金より、上がった物価の方が大きければ、手取りの購買力は目減りする。実質はそれを測る。
前段のコアコアCPI +1.7%を思い出すと、話はつながる。基調の物価が粘るかぎり、名目の賃上げは実質で相殺されやすい。暮らしの実感が数字と食い違うのは、ここに出る。
ここから言えるのは、『過去最高の賃上げ』の報道と『生活が苦しい』の体感が食い違うのは錯覚でなく構造だ、ということだ。名目の賃上げがいくら報じられても、物価の伸びがそれを上回れば手取りの実力は削られる。見るべきは賃上げ率でなく、賃金が物価を追い越した月がどれだけ続くか、ではないか。
影響が及ぶのは、消費と景気そのものだ。実質賃金がマイナスのままなら、賃上げが報じられても家計は財布の紐を緩めにくい。基調の物価が粘るかぎり名目の賃上げは相殺されやすく、個人消費の伸び悩みという形で経済全体に跳ね返ってくる。
『過去最高の賃上げ』という報じ方は、名目額という一面だけを切り取る。手取りの購買力=実質賃金が前年割れである以上、生活は豊かになっていない。名目の明るさと実質の目減りが同居するのが、いまの賃金の実像だ。見出しは名目を好み、家計は実質で暮らす。
前段のコアコアCPIが粘る限り、名目の賃上げは実質で相殺されやすい。つまり実質賃金は賃金交渉だけの問題ではなく、物価の基調とセットで決まる。賃上げ『率』の報道は、物価という分母を忘れさせる。
賃上げは失敗ではない。ただ『実感なき賃上げ』の正体は、努力不足ではなく物価という分母にある——この読みは、来月の同じ統計で誰でも検算できる。
取得 2026-07-28 07:31 JST(launchd 定時観測)· この記事の全数値は再取得できます