米国の景気後退センサー「サーム値」は 0.07。発火は0.50
失業率の底からの上がり幅で景気後退を捉えるサーム・ルール。閾値0.50に対し、現在値は静か。ただし雇用の別指標は強すぎるほど強い。
経済指標は、報道の見出しより〈川上〉にある。物価・金利・雇用は、家計や相場に効く前にデータへ先に表れる。単月の上下でなく、水準とトレンド、そして複数指標の整合を見る——それが早とちりを防ぐ読み方だ。
サーム・ルールは、失業率の3カ月平均が過去1年の底から0.50ポイント上がると景気後退入りを示す——という経験則(Sahm, 2019)。過去の後退局面をほぼ後れなく捉えてきた。
現在値は0.07で、閾値0.50までは距離がある。米失業率も4.2%と低位、週間の新規失業保険申請は187,000件で52週の最低水準。雇用は、むしろ強い。
別の角度からも一致する。米雇用者数(NFP)は52週レンジの100%と天井、求人件数(JOLTS)は53%。過熱の兆候はあっても、失速の兆候は今のデータにはない。
サーム値は「予測」ではなく、後退が始まったことを早期に知らせる警報だ。いま鳴っていない、という事実を記録する。閾値まで動いたときに、初めて意味が変わる。
景気後退の議論は、しばしば『雰囲気』で語られる。サーム・ルールは、その雰囲気に数値の錨を打つ。閾値0.50に対し現在は静か——だが『鳴っていない』ことと『安全』は同義ではない。警報は後退の「開始」を早く知らせる装置で、「来ない」ことは保証しない。
同時に見える雇用は過剰なほど強い。失業率4.2%、新規失業保険は52週最低。だが強すぎる雇用は、賃金と物価を押し続ける側でもある。後退の警報が静かなことと、物価の芯が粘ることは、同じ『強い労働市場』の別の顔だ。
サーム値は予言者ではなく火災報知器だ。今は鳴っていない、という記録に意味がある。閾値0.50に触れたその日、初めてニュースの意味が変わる——それまでは、静けさを静けさのまま観測する。
取得 2026-07-29 07:24 JST(launchd 定時観測)· この記事の全数値は再取得できます